■理由2 「引値ギャランティー」的発注構造
ターゲットとする指数の内容変更で、パッシブファンドが損をしやすいもう一つの理由に、パッシブファンド自身の発注方法の問題があります。
たとえば、指数の内容が○月×日の終値を基準として入れ替わる場合には、指数に入ってくる銘柄をこの終値で買い、除外される銘柄があればやはりこれをこの終値で売り、または指数から除外される銘柄が無くても新しい銘柄が入る場合にこれを買うための購入資金を作るために残りの全銘柄を少しずつ売る必要がありますが、この売りの銘柄も、この○月×日の終値で売ることができると、理論上(もちろん現実にも)パッシブファンドのパフォーマンスは指数とピッタリに推移することになります。
そのために、パッシブファンドの運用者がどうするかというと、○月×日の大引けよりも前の時間に証券会社に対して、自分のファンドが必要とする売り買いを、「引値(の成り行き)で」注文することになり、注文を受けた証券会社にとっては、この売買注文は相当程度確実に収益を生む非常に収益性の高いものになります。
この点を理解するためには、俗に「引値ギャランティー(引値保証)」取引と言われる取引について知っておくと良いでしょう。これは、ある銘柄について当日の引け値で売り買いすることを証券会社が投資家(主に機関投資家)に対して保証するような形で、投資家が証券会社に注文を任せる取引です(取引の受け渡しは、市場外取引で行われることが多いようです)。
仮に、「Aという銘柄を引け値ギャランティーで20万株買いたい」という注文を昼過ぎに機関投資家が証券会社に出した場合、証券会社は後場の取引時間中にA銘柄をたとえば10万株自己勘定で買っておいて、大引けにかけて残りの10万株を買うと、A銘柄の引け値は高く付きやすく、そうなるとあらかじめ買っておいた10万株分が儲けになる(発注した機関投資家に対しては20万株を「引け値で」渡せばいいので)という形で、絶対ではありませんが、かなりの程度確実に儲けることができます。
この種の発注は、投資家にとっては損なのですが、指数のパフォーマンスを追えばいいだけのパッシブファンドの運用者にとっては大いに便利であり(かつ、リスクが無くて気楽でもあります)、また、証券会社は、あらかじめこの種の売買のニーズがあることを知っているので、系列の投信会社をはじめとして、パッシブ運用の運用機関に対して、入れ替え日の引け値ベースでの取引を持ちかけます。損をするのはパッシブファンドの投資家であって、証券会社もファンドマネジャーも困りません。
コバンザメ投資とこのような取引の複合的な効果で、これまでに、日経平均の銘柄入れ替えなどの際に、殆どの場合、パッシブファンドの投資家が、毎回数十ベイシス(1ベイシスは1%の100分の1)以上の損をすることが起こってきました。パッシブファンドにとっての、こうした損失は、売り買いの時点と株数が他の市場参加者にとって予測可能で丸見えだというパッシブファンドの構造的な弱点に起因するもので、この弱点はパッシブファンドの運用金額が大きくなるほど強く表れます。